



千鳥ヶ淵-靖国神社 桜
毎年、桜が咲くと、なぜか胸がざわつく。

千鳥ヶ淵。青空に枝を広げた桜が、堀の水面へなだれるように咲いていた。ソメイヨシノの花言葉は「純潔」。淡く紅を差した白は、確かに汚れなく、まっすぐだ。

日本人にとって桜は、ただ美しいだけの花ではない。出会いと別れ、始まりと区切り ── 人生の節目には、いつも桜が咲いている。だから満開のこの一瞬に、誰もが足を止め、同じ空を見上げるのだろう。

靖国の境内では、年老いた桜に出会った。苔むした幹から、若葉を連れて花がひらく。その太い枝は、木の支柱と縄でそっと支えられていた。名所の桜が毎年当たり前に咲くのは、当たり前ではない。誰かが幹を見て、枝を支え、手をかけている。

散り際の潔さばかりが語られる桜だが、その裏には「咲かせ続ける」静かな営みがある。桜のもう一つの花言葉は「精神美」。花の美しさと、それを守る人の心 ── どちらも、この国の春そのものなのだと思う。
Camera: SONY NEX-5N.


