タイ・アユタヤ遺跡ワット・マハタート、菩提樹の根に抱かれた石造りの仏頭のクローズアップ。おだやかに眼を閉じた仏の顔が、幾重にも絡み合った太い木の根の間にぴたりと収まり、静かな表情を浮かべている。
木の根が、そっと仏の顔を抱く。おだやかな微笑をたたえたまま、仏頭は二百数十年を菩提樹とともに生きてきた。
大樹の株元に埋もれた石造の仏頭。背後には赤レンガの塀と遺構、木漏れ日の空が広がる。タイ・アユタヤのワット・マハタート。
根に宿る、静かなまなざし ── ワット・マハタート(アユタヤ)
巨大な樹の根元に埋もれた石造の仏頭。無数の根が地面まで広がり、両脇には崩れかけた赤レンガの塀が続く。落ち葉の散る乾いた地面。タイ・アユタヤのワット・マハタート。
樹が抱く、四百年の祈り ── ワット・マハタート(アユタヤ)

2017/02/10. Ayutthaya, Thailand.

タイは戦争を知らない、穏やかな「微笑みの国」── 俺は勝手にそう思い込んでいた。だが、この寺を歩いて、その思い込みは静かに崩れた。

タイ・アユタヤ遺跡ワット・マハタート、菩提樹の根に抱かれた石造りの仏頭のクローズアップ。おだやかに眼を閉じた仏の顔が、幾重にも絡み合った太い木の根の間にぴたりと収まり、静かな表情を浮かべている。
木の根が、そっと仏の顔を抱く。おだやかな微笑をたたえたまま、仏頭は二百数十年を菩提樹とともに生きてきた。

ワット・マハタートは、かつてアユタヤ王朝の中心に建っていた壮麗な寺院だ。しかし1767年、ビルマ軍の侵攻によって町ごと焼き払われ、堂内の仏像は次々と頭部を落とされた。この仏頭も、そうして地に転がされたひとつだという。その歴史を知った時、俺は言葉が出なかった。

大樹の株元に埋もれた石造の仏頭。背後には赤レンガの塀と遺構、木漏れ日の空が広がる。タイ・アユタヤのワット・マハタート。
根に宿る、静かなまなざし ── ワット・マハタート(アユタヤ)

地に落ちた仏の顔を、木がゆっくりと根に抱き込み、数百年をかけて今の姿になった。人の手が壊したものを、木々の生命が静かに包み直したのだ。

巨大な樹の根元に埋もれた石造の仏頭。無数の根が地面まで広がり、両脇には崩れかけた赤レンガの塀が続く。落ち葉の散る乾いた地面。タイ・アユタヤのワット・マハタート。
樹が抱く、四百年の祈り ── ワット・マハタート(アユタヤ)

穏やかに伏せられたこのまなざしの奥に、これほどの惨劇が刻まれていたとは、思いもしなかった。平和に見える国にも、確かに戦火の記憶は眠っている。その事実を、仏頭は何も語らず、ただ静かに俺の前に突きつけてきた。

SONY NEX-5N


📖 この仏頭が残るワット・マハタートを歩いた記録

この菩提樹に抱かれた仏頭は、1767年の戦争で破壊されたアユタヤに
今も残る仏のひとつです。同じ寺院を歩いた訪問記を、3つの記事にまとめました。

崩壊した建物たち ― 戦火をくぐった王都、アユタヤ

首を切られた仏像たち ― アユタヤに残る、破壊と祈りの記憶

破壊をまぬがれた仏たち ― 悟りの印と、平和への祈り


← Back to Gallery

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です