


2017/02/10. Ayutthaya, Thailand.
タイは戦争を知らない、穏やかな「微笑みの国」── 俺は勝手にそう思い込んでいた。だが、この寺を歩いて、その思い込みは静かに崩れた。

ワット・マハタートは、かつてアユタヤ王朝の中心に建っていた壮麗な寺院だ。しかし1767年、ビルマ軍の侵攻によって町ごと焼き払われ、堂内の仏像は次々と頭部を落とされた。この仏頭も、そうして地に転がされたひとつだという。その歴史を知った時、俺は言葉が出なかった。

地に落ちた仏の顔を、木がゆっくりと根に抱き込み、数百年をかけて今の姿になった。人の手が壊したものを、木々の生命が静かに包み直したのだ。

穏やかに伏せられたこのまなざしの奥に、これほどの惨劇が刻まれていたとは、思いもしなかった。平和に見える国にも、確かに戦火の記憶は眠っている。その事実を、仏頭は何も語らず、ただ静かに俺の前に突きつけてきた。
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📖 この仏頭が残るワット・マハタートを歩いた記録
この菩提樹に抱かれた仏頭は、1767年の戦争で破壊されたアユタヤに
今も残る仏のひとつです。同じ寺院を歩いた訪問記を、3つの記事にまとめました。
▶ 首を切られた仏像たち ― アユタヤに残る、破壊と祈りの記憶


