



2016/10/2〜3,Sunset on Brisbane. Town of I stranded.

車が壊れた。旅の途中、予定も行き先も宙に浮いて、ただ途方に暮れるしかなかった。けれど不思議なもので、動けなくなったその街が、いちばん記憶に残っている。
やることもなく川辺をぶらついた夕暮れ。空は燃えるように焼け、観覧車のシルエットの向こうに陽が沈んでいく。オレンジの光が川面に長く伸びて、足元の岩まで金色に染めた。焦りも苛立ちも、その色の前ではどうでもよくなっていった。

日が落ちればブリスベンの高層ビルが灯りをまとい、街は昼と夜のあいだの青い時間に沈む。赤くライトアップされた橋、水面にきらめく無数の光。対岸の遊歩道をあてもなく歩けば、遠くの観覧車だけが白く回り続けていた。

夜がふけて出会ったのは、紫にきらめく古い石造りの館。かつての財務省の建物が、幻想的な光を浴びて夜に浮かび上がる。歴史と現在が溶け合うその姿に、しばらく足を止めた。
行き詰まったはずの旅が、いつのまにか宝物みたいな夜をくれていた。計画通りにいかないからこそ、旅は美しいのかもしれない。

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