

2016/10/03 Play with Cat on Brisbane. Even I lose chess piece.
相棒だった車を、ブリスベンで手放した。ケアンズからの長い道のりを共にした一台も、修理代に見合うだけの価値はもう残っておらず、俺はここで別れを告げるしかなかった。長旅の盤から、大事な駒を一つ失ったような心持ちで、その夜は安宿に転がり込んだ。
寝つけないまま、一晩が明ける。まだ誰も起き出さない早朝、ひとり庭へ出ると、そこは巨大なチェス盤になっていた。白と黒の駒が、朝のやわらかな光の中に静かに整列している。

その盤上を、一匹の黒猫が我が物顔で占領していた。胸元と足先だけ白い、堂々としたタキシードだ。芝にごろりと身を投げ出し、こちらをじっと見上げ、小さく舌をのぞかせる。まるで盤を統べる王のように、泰然と構えていた。

駒を一つ失っても、勝負はまだ続いている ── 猫のその佇まいが、そう言ってくれている気がした。旅のつまずきの朝に交わした、この一匹とのひととき。俺はきっと、長く忘れないだろう。
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